テロと戦うサスペンス『BLOODY MONDAY 第8巻』
- 2010年 7月 26日 07:47
- 【書評】
本書(龍門諒原作、恵広史作画『BLOODY MONDAY 第8巻』講談社、2008年11月17日発売)は『週刊少年マガジン』で連載していたサスペンス漫画の単行本である。2008年10月からTBS系列でテレビドラマも放送されている。高校生ながら天才的なハッカーである主人公・高木藤丸がウイルステロに立ち向かう物語である。
「目眩く頭脳戦!」「予測不能の展開から目を離すな!」「少年漫画史を変えるショッキングサスペンス連載」という触れ込みで連載開始された作品である。その触れ込みに違わず、IT技術を駆使した頭脳戦や、誰が味方で誰が敵か分からないという緊迫感、主人公側の人物でもあっさりと殺されてしまうストーリーと息をつかせぬ展開になっている。
立場的に週刊少年ジャンプで連載され、大ヒットした『DEATH NOTE』に近い位置づけである。元々、ジャンプでは現実離れした冒険物が多いのに対し、マガジンでは現代を舞台にリアリティを追求した作品を得意としていた。それが『DEATH NOTE』によって、お株を奪われた状態となった。巻き返しを図る意味でマガジン編集部にとっても本作品への意気込みは大きいものと思われる。
『DEATH NOTE』では「死神」「名前を書くと人が死ぬノート」とフィクションでなければあり得ない設定となっていた。これに対し、本作品ではハッキングやウイルスのように現代技術の枠内に収めており、よりリアルになっている。また、テロリストを狂信的な宗教団体とするなど現実の事件を連想させる設定となっている。
物語の価値基準として『DEATH NOTE』では主人公の夜神月がデスノートを使って殺人を行う立場で、自らの価値基準で正当化しているものの善玉とは評価できなかった。そのために最終的に何れが勝利するのか展開が読み難かった。これに対し、本作品はテロリストという分かりやすい悪を描いている。それでいながら主人公側の勝利が見えない展開となっており、これが作品の面白さになっている。
藤丸は優秀な人物であり、テロ組織を出し抜くこともしばしばであるが、実はテロ組織の掌で踊らされていることも多い。少年漫画の理想的なヒーロー像である敵の策略を乗り越え、敵を打ち倒す主人公には程遠い状況である。主人公といえども決して万能ではないことが作品世界にリアリティを与えている。
この巻では藤丸達が弥代学院に閉じ込められ、同級生の立川英が殺人ウイルス「BLOODY-X」を発症してしまう。藤丸はテロリストを追い詰めることをできても、英を救うことはできない無力感を味わうことになる。
物語では既に多くの死者が出ており、最終的にテロリスト組織に勝利したとしても手放しで喜べるハッピーエンドになるかは疑問である。どのような展開を辿るのか目が離せない作品である。
東急不動産消費者契約法違反訴訟を描いたノンフィクション『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社、2009年)の著者です。


