東急不動産だまし売り裁判購入編(18)
東急リバブルとのやり取りは埒が明かなかった。原告は糊の容器の中に落っこちたようなものであった。どうしても外に出られないし、もがいても消耗するばかりであった。閉塞状況を打破したものは国土交通省の行政指導であった。国土交通省担当者から9月16日に原告宅に電話があった。担当者は、東急リバブルに事実確認をした経緯を説明した。
担当者は東急リバブルお客様相談室の藤田伸紀室長代理と電話で話したという。藤田は「隣地所有者から将来的に建てたいと聞いているが、資金がないと言っていた」と主張した。それに対し、担当者は「話し合いをするようにと言いました」と話した。
国土交通省担当者の電話の数時間後、宮崎から電話がある。宮崎は原告の都合も聞かず、一方的に話した。それは予め書かれた原稿を読み上げるような話し方であった。
「お手紙が届きました。それで一度御自宅を訪問して説明したいのですが」
東急リバブルは唐突に態度を急変して原告宅訪問を打診した。背後に国土交通省の指導があることは明白である。消費者の訴えには耳を貸さそうとせず、役所が口を出すと手のひらを返すように態度を改める。
実際、この後も一度だけ東急不動産から会って説明したい旨の提案がなされたが、それは役所に相談した後であった。一消費者からの問い合わせである限り、ごまかし通したいとの意図が透けて見える。
「私としては、こちらの問いにきちんと答えてくれるのでしたら、手紙のやり取りでも問題はないと思っています」
「一度お話した方がいいと思いまして」
典型的な悪徳不動産営業である宮崎は相手の言葉には全く耳を貸さない。代わりに自己の要求だけを押し付ける。
「自宅というと場所は埼玉で宜しいですか」
「埼玉をご希望されるのでしたら、うかがいます」
「では、お願いします」
「私と上司で訪問させていただきます。ただ、二人の予定が空く日が三連休の9月18日から20日までの午前中だけになっています。その中で都合のいい時間をご指定ください」
宮崎の方から訪問を申し出たにもかかわらず、訪問日時を一方的に限定した。典型的な悪徳不動産営業である宮崎は他人の都合を全く考えない。譲るのは相手と決め込んでおり、自分の都合だけを押し付けてくる。他人の都合は頭からない。人のためよりも自分のためが第一で、欲望は限りなく追求し、わがままを押し通す。
「一方的な指定ですね。都合のいい時間を指定ください、と言ってもそれでは選択の幅はないも同然です。私にも予定があるので、都合をつけなければなりません」
「では、明日、改めてお電話させていただきます」
宮崎から9月17日に電話がかかるが、原告は都合により出られなかった。宮崎は留守電に「明日、また電話します」と残した。翌18日、原告は宮崎からの電話を待ったが、かかってこなかった。仕方がないため、原告から電話をかけた。
「昨日、お電話したのですが、不在だったもので、後で電話しようと思っていました」
宮崎は原告が電話に出なかったのが悪いと暗に非難した。そのようなことを協議の日程を決める電話で、わざわざ言う必要性はどこにもない。しかし典型的な悪徳不動産営業である宮崎は常に相手を非難しなければ気が済まない。
「協議の日にちですが、第一希望は9月23日。この日でしたら、時間は、いつでも構いません。それが駄目でしたら、私としてはあまり好ましくありませんが、9月20日です」
「上司の予定を確認した上で回答します。それからアルスにはもうお住まいにならないのですか」
「はあ?」
原告は宮崎の文脈を無視した質問を理解できなかった。
「アルスの方がお話しやすいと思いまして」
「埼玉に伺うと聞きましたが。違いますか」
悪徳不動産営業には時間の感覚がない。約束をしても、鶏のように三歩歩けば忘れてしまう。彼にとって街は今日一日を生きる戦場であった。過去の経緯を思い出す時間はない。未来もないくらいだから、過去の出来事を記憶にとどめなくても当然である。
「それに購入後、一年後足らずで、日照がなくなる問題物件を販売しておきながら、何言っているのですか。少しは相手の状況を考えてください」
「わかりました」
熱のこもらない言葉であった。その後、宮崎から電話があり、「9月19日11時に伺う」と一方的に指定された。原告の希望は完全に無視された。真面目に検討されたかも疑わしい。
林田力「東急不動産だまし売り裁判購入編(12)」JanJanBlog 2010年8月28日
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林田力「東急不動産だまし売り裁判購入編(13)」JanJanBlog 2010年8月29日
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林田力「東急不動産だまし売り裁判購入編(14)」JanJanBlog 2010年8月30日
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林田力「東急不動産だまし売り裁判購入編(15)」JanJanBlog 2010年8月31日
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林田力「東急不動産だまし売り裁判購入編(16)」JanJanBlog 2010年9月1日
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林田力「東急不動産だまし売り裁判購入編(17)」JanJanBlog 2010年9月2日
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東急不動産消費者契約法違反訴訟を描いたノンフィクション『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社、2009年)の著者です。

