耕作放棄地プロジェクト、現場視察に参加

耕作放棄地の現場。代表がこつこつ草刈りをしてここまでに。

 友人が主宰する「NPOよかっぺいばらき」の耕作放棄地の再生プロジェクトに参加してきた。耕作放棄地は、農家の高齢化や後継者がいないなどの理由で条件の悪い田んぼの作付けが放棄された結果、田んぼが木や草で覆われてしまい、耕作不能になった状態をいう。単純にいうと食糧自給率の低い日本で「これはまずい」というのが大方の認識なのだが、如何せん、コメの自給率はほぼ100%であるばかりか、農協が推進する減反政策の参加者においては、約3分の1は耕作がなされていない(戸別補償がある)。また、その減反部分は、「そば」などの転作が奨励され、補助金がつく仕組みもある。減反政策に反対の立場の農家も、もちろん、いるが、供給過剰になればコメの価格が下がり、生産者は生きていけない。つまり、耕作放棄地を救い、食糧自給率を高めよう、という考えは、まったくのトンチンカンだということだ。僕が耕作放棄地再生活動に賛同する論理は少し、複雑だが、それはおいおい。

土浦市のJA農産物直売所。盛況だった。併設そば店も大人気。

消費者の立場からすると、10キロ5000円近いコメ(新潟コシ)は相当に高いと感じるだろうが、農協への出荷価格は1等米で1俵1万2000円(新潟コシ)、1反の田んぼで7俵(玄米)前後。経費は?苗代、肥料、農薬、農機の減価償却、修理代、保険……農協への手数料や作業委託費。労働は?田起こし、代掻き、田植え、草刈り、水の管理、稲刈り、肥料・農薬散布、転作作物の栽培……この人件費は出ますか?

TPP……日本のコメは高く、国際競争力がないと言われる。外国産コシヒカリが輸入されれば、たちまち、淘汰されてしまう、とも。だから規模の拡大(農地の集約)をしてコスト競争力を高め、高品質のコメを輸出しようではないか、と。問題はその農地の集約の仕方や現実の農家の実情をどう見るか、だ。その矢先に原発事故。輸出は急激に落ち込んでいる。そりゃそうだ。放射能に汚染されているかもしれないコメを輸入するには勇気がいる。

福島の農家で起きている、作付け制限をめぐる対立はかなしい。放射性セシウム暫定規制値(1kg当たり500ベクレル)と新規制値(1kg当たり100ベクレル)の間で、作付制限すべきという意見と、全域作付すべきという意見がぶつかっている。先祖伝来の田畑、丹精こめておいしいコメを作り上げてきた努力が突然、失われる経験……消費者の視点はどうか?セシウムが含まれるコメを買うか?程度により、買うか?農家の生活や暮らしを考えて、数値が安全なら多少のセシウムが含まれていても買うべきか?いずれ放射能汚染は全国の食糧に影響を与えないではおかないだろうから、セシウムが含まれていても安全な数値なら買って食べる、という選択は間違っていない、という意見も。

広大な田んぼで作付がSTOPした場合の福島の姿を想像してみる。農家はどうなるのだろう。地域の風景はどうなるのだろう。日本が必要とするエネルギーと原発が破壊する日本。目先の判断ではなく、100年も200年も向こうを見据えた政策。今から準備しなければ間に合わないのではないか?僕はおそらく10年ぐらいで世界から引退するからいいのだが……。

地主さんが田んぼや畑の活動場所(候補地)を案内してくれた。

 「NPOよかっぺいばらき」は、もうすぐ正式に認可される予定だという。いくつかの事業をスタートさせるべく計画されている。会員も中核となる方が決まりつつあり、これから事業を支える人々に参加してもらう段取りだ。理解ある地主さんの好意で1反ほどの耕作放棄地をお借りし、この春から作付を試すべく、計画が動きだした。僕は、素人に毛がはえた程度の経験者だが、今のところ、他は初体験がほとんど。やることは多いし、課題も少なくない。人もカネも不足している。けれども、熱意はいっぱい。多くの人々が集まってくる予感がしている。この経験や人の輪を、ふるさとに生かせたらと今から楽しみだ。

酒井多美夫記者のプロフィール

ブログ「吉川タイムズ」でも同記事を読むことができます。

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