「再稼動」より「廃炉事業」で地元が潤う
すでに筆者が試算(*1)したように、原発のある自治体と、ない自治体で、「課税義務者課税対象所得」「失業率」「住民1人あたり民生費(福祉関係費歳出)」を統計的に比較したところ、有意な差がない。おおい町長は再稼動歓迎を表明したというが、筆者の同記事で示したように、大飯原発の運転開始以後は、地元自治体の商業販売額も低下傾向である。これは、原発の主要な地域経済効果は建設段階の、いわゆる「工事」で発生するためである。つまり、再稼動しても地域経済に大した効果がないことはわかっている。
もし原発建設段階のような「工事」が欲しいなら、いい考えがある。それは「廃炉事業」を始めることである。原子炉が停止していても、使いかけの燃料棒が発電所内に貯留されていると、福島第一原発の4号炉と同様に依然としてリスクは軽減されない。これを安全に撤去し廃炉処理を実施しなければならない。
日本で、商業炉の解体撤去事業は実際に行われたことがないので、正確な費用は筆者もわからない。しかしこれまでいくつかの情報で推定されている数字を参照すると、少なく見積もっても「1炉あたり」次のような費用が想定されている。
解体費用 300億円
解体に伴って生じる廃棄物の処分 400億円
施設撤去までの維持費 400億円
運転中に出た低レベル放射性廃棄物の処分 140億円
合計 1,240億円
これを県内15基(商用路・実験炉)で今後10年間に均等に需要が発生するものとして、産業部門別に推定・整理し、産業連関分析により効果を推定する。その結果、約1,500億円の付加価値と約13,000人の雇用をもたらすと推定される。付加価値の誘発量では再稼動を下回ると思われるが、雇用誘発量では再稼動より大きい。もちろん、処理をていねいにするほど雇用は増える。これらに前述の記事で試算したように、県内各産業の自給率向上を組み合わせれば、再稼動よりも福井県の経済にプラスをもたらす。原発を止めていると地域外からの定期検査関係者が来なくなって、地元の旅館業の人が困っているなどと報道された。それだったら「廃炉工事」を始めたほうがはるかに多くの関係者が、しかも年間を通じて集まるだろう。
(*1)福井の「地産地消」で脱原発 http://www.janjanblog.com/archives/68245
JanJanニュース創立から参加している。交通政策・環境政策がテーマ。「政治談議」でなく論理と数字で評価することを重視。

